関ケ原古戦場

戦国を体感する21世紀型の観光地

「関ケ原は21世紀型の観光地である。」

全国的な知名度をもつ「関ケ原」について、私は20年以上も前から、ずっとそう思ってきた。では、なぜ21世紀型なのか?

関ケ原は、まち全体が古戦場で、関ケ原合戦では全国の名だたる武将が関ケ原に出陣し、天下分け目の戦いがここで繰り広げられた。町内各所に参戦武将の陣所跡などの石碑が建ち、周囲には古戦場を一望できるビューポイントがいくつもある。

20世紀における旧来型の観光では、団体旅行が中心で、訪れる場所も風光明媚な景勝地か、歴史的な建造物のある場所が多かった。その点、関ケ原には国宝の城があるわけでもなく、ただ国史跡に指定された広大な空間に石碑が建つのみ。大型観光バスが入れない場所も多く、イベントがあるとき以外に多くの観光客が訪れているとは言えなかった。

しかしながら、21世紀に入りその様相は一変する。旅行の中心は団体旅行から個人旅行に変化し、訪れる場所も非常に個性的になった。目に見える魅力から五感で感じる魅力へと関心が移り、それまで見向きもされなかった場所に多くの観光客が訪れるようになった。

男性か年長者が中心だった歴史ファンも、「戦国無双」や「戦国BASARA」などのゲーム・アニメを契機に若者、特に女性が爆発的に増えた。彼らはゲームやキャラクターの背景を知るために歴史を学び、そのストーリーを知ってさらに歴史が好きになっていく。こうして関ケ原に多くの歴史ファンが訪れるようになり、彼らはその風景や石碑の中に壮大な歴史のストーリーを感じ、感動の渦に巻き込まれていった。

関ケ原古戦場屈指のビューポイントのひとつ、西軍・石田三成陣跡のある笹尾山からは、関ケ原古戦場が一望できる。一般的な観光客にとっては現代の古戦場の風景にすぎないが、歴史ファンがその場所に立つと、石田三成の息遣いが感じられ、眼下に押し寄せる2万人もの東軍の兵士たちが見えるという。

「観光」から「感光」へ。20世紀の「光を観る」観光から、21世紀の「光を感じる」観光へと、観光の在り方は劇的に変化した。そして、その21世紀型の観光地の代表として、関ケ原は走っている。

 

2020年10月21日、新暦で関ケ原合戦からちょうど420年のその日に、新しい観光拠点として「岐阜関ケ原古戦場記念館」がオープンした。関ケ原合戦を知らなくとも、歴史が苦手であっても、関ケ原合戦を体感し、その魅力に触れることのできる施設となっている。

この施設の訪問を契機に歴史を好きになる人も生まれることであろう。そして、歴史ファンにとっても、新しい交流の場となるとともに、展示やシアター、展望台を見てから関ケ原古戦場めぐりに出かけるなど、さらに多角的に古戦場観光が楽しめることが期待できるものとなっている。

21世紀に進化しつづける観光地、関ケ原へ是非ともお越しいただきたい。(Y.I)