清流長良川の鮎

岐阜県が世界に誇る遺産、「GIAHS(世界農業遺産)」にして 香味絶佳な川魚界のクイーン!

 萌葱(もえぎ)から若草のグラデーションに菜の花色のアクセント。きめ細かな鱗から別名を細鱗魚(さいりんぎょ)、そのさわやかな(スイカのような)香りから香魚とも呼ばれる鮎は、薄手の生麻を粋に着こなし、柳腰でしゃなりと歩く、和風美人の品格が漂う。まさに、川魚界の銀幕女優、もとい銀鱗女優。

 

 そんな彼女、ならぬ彼魚が、「清流長良川の鮎」として、2015年に手にした世界的タイトルが、「GIAHS(世界農業遺産)」。

これは、次世代に受け継がれるべき伝統的な農林水産業や生物多様性、伝統知識、農村文化、農業景観などを全体的に評価し、次代に守り伝え、活用していくことを目的に「国際連合食糧農業機関」が認定するものである。

長良川は流域の人々のくらしの中で清流が保たれ、その清流で鮎が育ち、清流と鮎は、地域の経済や歴史文化と深く結び付いている。人の生活、水環境、漁業資源が相互に関連しながら保たれている。この「里川」の循環システムが世界的評価を受けたことにより、彼魚は「清流長良川の鮎」として、その名を世界に知られることとなった。

 

 そして、見目麗しく、世界的名声を博す彼魚の魅力が存分に発揮されるのは、やはり皿上である。皿上こそが彼女のステージ。

長良川・木曽川・揖斐川と、清流を行けば「梁(ヤナ)」にあたる、岐阜県民ならよくご存じの鮎料理の数々。骨までほろりの甘露煮、歯ごたえしこッと活鮎の刺身、のんべえ垂涎・・・ワタの塩辛「うるか」に軽くあぶった一夜干し、魯山人も好んだ塩焼きに味噌だれも香ばしい田楽、フィナーレは旨味ぎっしり鮎雑炊。生で良し、焼いて良し、煮て良し、揚げて良し、まさに死角無し、香味絶佳な銀鱗女優。

 

ただ、美人薄命とはよく言ったもので万葉集にも歌われる鮎の別名は「年魚(あゆ)」。秋に川で生まれ、海で越冬、春に川へ戻って夏を過ごし、秋に産卵し一年でその一生を終える。岐阜に生まれて岐阜に死す、そんな健気で儚げなところも愛おしい。

 

敢えて言おう「GIAHS!(Gifu no Ayu Ha Saiko!)」と!

(N.S)