岐阜に息づく笑いの文化

「お笑い」と言えば大阪のお家芸というイメージがありますが、実は、岐阜県にもしっかりとした笑いの文化が継承されているんです。

古典落語の祖と言われる高僧「安楽庵策伝」は岐阜市の出身で、毎年、その名を冠にした全日本学生落語選手権『策伝大賞』を開催していますし、世界遺産の本美濃紙で知られる美濃市では江戸時代に流行した、即興の喜劇「にわか」が「美濃流し仁輪加」として今も継承されています。

さらに、現代は、笑いを通した地域の活性化を目的として吉本興業の「三ツ星ジョージ」さんが日々、奮闘されております。

岐阜県の魅力を広めるために彼が選んだ方法は、ご当地ネタを作るでもなく、ステージでトークするでもなく、伝統文化を継承することでした。地域の人々と暮らし、文化を体感することで、自分の言葉で発信したいという熱い想いからでした。

例えば伝統工芸品「美濃和紙」の手漉き技術を美濃市へ3か月住み込んで職人に従事し、会得されました。3か月を経て、最後にお礼として街の人々にフリップ芸を披露されたのですが、そのフリップに使用した紙はなんと自らが漉いた美濃和紙でした。ネタはひどくスベったようですが(本人談)、彼が漉いた紙の仕上がりはとても美しいものでした。

その後も彼はネタに磨きをかけることよりも、とにかく地域に寄り添いました。ピン芸人の祭典“R-1ぐらんぷり”で10年連続1回戦敗退を記録した2016年には長良川鵜飼を盛り上げるため、岐阜市の無形文化財である船頭の操船技術を身に付け、観覧船の船頭を務めました。お笑い芸人でありながら、笑いなしで真摯に業務に従事されました。本人曰く「お客様の命を乗せている船頭がふざけてはいけない」と技術だけでなく船頭のマインドをも継承していました。

そして現在は岐阜県警察「安全・安心まちづくり大使」に就任し、さらに活動の幅を広げております。ある日、大使として子供たちの安全のため下校の見守りをしていたところ、不審者と間違えられて防犯ブザーを鳴らされた彼は、誤解を解くためにお笑い芸人と名乗りネタを披露しましたが、子供たちに「俺の友達のほうが面白い」と再び防犯ブザーを鳴らされました。

失敗や苦労は絶えませんが、まっすぐな彼の人柄は周りを笑顔にします。

そして2019年、ついに“R-1ぐらんぷり”で3回戦に進出を果たしました。地方芸人では彼が唯一でした。

 

策伝から続くお笑い文化を継承し、これからも笑顔の溢れる岐阜県を守ってくれるのはジョージさんだと私は確信しております。(S.T)